今回は「学問案内」から少し離れ、日々の勉強がちょっと楽しくなるお話をお届けします。

みなさん、美術における「黄金比」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

たとえば、
レオナルド・ダ・ヴィンチ 作『モナ・リザ
葛飾北斎 作 『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏
これらの作品はとても美しい構図であるとして有名です。
また、パルテノン神殿をはじめ、建築分野にも多く利用されています。
現代でもアートデザインの世界では欠かせない「美の法則
その美しさの秘訣が「黄金比」というものです。



▼ 葛飾北斎冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』 
  海外の画家にもインスピレーションを与えたとして有名です。
  波の形や全体の構図に黄金比が使われています。

引用:東京富士美術館


実は、この黄金比というのは数学と深いつながりがあります。
今回は「黄金比」についてご紹介します。


 黄金比の紹介

・そもそも黄金比ってなに?
・どうして 1 : (1+√5) / 2 になるの?
1 : (1+√5) / 2 ってだいたいどれくらい?


・そもそも黄金比ってなに?


黄金比とは特殊な線分比としてあらわすことができます。
ある線分をa:bに内分 (=内側に点を打って分割) し、a : b = b : (a+b) となるのが「黄金比」です。

▼ 黄金比の線分。外中比とも呼ばれるそうです。
  ※ちょうどいい画像素材がないためマウス作図でお届けします。




これを満たすのが 1 : (1+√5) / 2 と言われています。




・どうして 1 : (1+√5) / 2 になるの?


さて、比例式の性質を覚えていますか?

例えば

3 : 2 = 9 : x
 
という式が出てきたとき、

3x=2×9

という風に 外側×外側=内側×内側 という式が成り立ちます。
これを解くと

3x=2×9 
x=18  となりますね。



同じように、先ほどの黄金比を比例式で表してみます。

a : b = b : (a+b)

これを先ほどと同様に 外側×外側=内側×内側 で表し、整理していきます。

a(a+b)=b2
a2+ab=b2
a2+ab-b2=0

ここで仮にa=1としてbの値を求めてみましょう

1+b-b2=0

この式を並びかえると

-b2+b+1=0

b2についている負の記号(係数:-1)が邪魔なので、全体に-1をかけます

すると

b2-b-1=0


ここで役に立つのが中学校3年生で習う2次方程式の「解の公式」です。

解の公式に当てはめることで、bの値が求められます。


 ▼ 2次方程式の解の公式




b2-b-1=0 を解の公式に当てはめやすいよう、 x2-x-1=0 とすると…






線分において 答えが負の数になってしまってはおかしいですよね?
(線の長さの話ですから必ず正の数になるはずです)
そのため、正の数だけを採用します。


a : b の比を 1 : x  としたとき、x= (1+√5) / 2 となるわけです。

1 : (1+√5) / 2 が黄金比となることがこうして説明できましたね。



1 : (1+√5) / 2 ってだいたいどれくらい?


 (1+√5) / 2 と言われても、具体的にどれくらいの値なのかピンときませんよね??

そこで使えるのが「近似値」という考えです。

√52.236079… 

語呂合わせで富士 山麓(ふじ さんろく)オウム 鳴くと紹介されることが多いです。

ここでは小数第2位を四捨五入し、

√5=2.2 とします。

すると、

(1+√5) / 2 = (1+2.2) / 2
                 =(3.2) /2

これは3.2÷2 ということですので、 (1+√5) / 2 =1.6となります。

つまり、
黄金比である 1 : (1+√5) / 2 というのは、およそ 1 : 1.6 ということですね。



▼ レオナルド・ダヴィンチ 『モナ・リザ』
  顔の幅について横 : 縦 が 1 : (1+√5) / 2 の黄金比になっているそうです。



 

私たちが毎日の生活で目にするもののあちこちに、この黄金比は隠れています。


「素敵だな」と思うデザインや作品、
「よく見かけるなあ」というロゴやマーク。
少し観察してみてください。
もしかしたらそこにも黄金比が隠れているかもしれませんよ!




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